草舟座右銘

「いま、ウナムーノを問う」展
―日本人画家 戸嶋靖昌によるウナムーノへのオマージュ展―

はじめに―ウナムーノと戸嶋靖昌記念館 展覧会パネル文章

 ウナムーノを愛する心が、私と戸嶋靖昌を結びつけたのだ。私は事業家であり、戸嶋は画家であった。別々の人生を生きて来た二人の人間が、互いに惹かれ合うものによって固い友情を結んだのである。そこには、同じ苦悩と同じ喜びが共存していた。人間として、何ものかを貫くための「涙」が、その友情の柱として屹立していたのだ。二人の男は、人生を語り、芸術を論じ、人類の使命について意見を闘わせていた。人間がもつ崇高と悲惨を語り明かしていたのだ。私は戸嶋を桁違いの芸術家として尊敬した。戸嶋は私の信念に男としての深い共感を示してくれていた。我々の人生におけるこの邂逅が、「何ものか」を生み出す予感を二人は感じていたのである。
 我々は、出会いと共に意気投合し、「百年の知己」と成った。ウナムーノの『生の悲劇的感情』に対する二人のもつ畏敬が、共感の渦を巻き起こしていたのである。我々は共に、ウナムーノから力をもらうことによって立ち上がって来た。その著作が、信念を貫く人生を歩もうとする二人に出会いの場を提供したのだ。スペインの芸術に魅了されていた戸嶋は、ウナムーノの中にスペインの最良の魂を見出していた。苦悩をつんざいて生まれ出づるスペインの魂を、戸嶋は描きたいと願った。私はその戸嶋の芸術の中に、ドン・キホーテの騎士道を感じていたのだ。それは、ウナムーノ自身の騎士道でもある。ウナムーノから与えられた情熱が、我々の友情を育み、戸嶋の死後、その記念館をこの世に生み出した。この記念館は、ウナムーノから与えられたものだと思っている。永遠を求め、苦悩をつんざくその情熱が生み出したものだと私は考えているのだ。

戸嶋靖昌記念館館長
執行草舟
〈展覧会名〉
「いま、ウナムーノを問う」展 ―日本人画家 戸嶋靖昌によるウナムーノへのオマージュ展―
〈会期〉
2018年5月17日~6月15日
〈概要〉
戸嶋靖昌は、30年近くスペインで制作を続けた日本人画家です。戸嶋はスペインとそこに生きる人びとを愛し、またスペインを代表する思想家、著述家、詩人であるミゲール・デ・ウナムーノの思想を愛していました。日西外交樹立150周年、サラマンカ大学創立800周年を記念する本年に、戸嶋靖昌の展示を行います。戸嶋の展覧会は2015年に駐日スペイン大使館にて、また2017年にセルバンテス文化センター東京にて大成功を収め、日本ではNHKによって戸嶋靖昌の番組が作られました。さらに2017年には「エル・パイス」紙に戸嶋の記事が掲載されました。今回、戸嶋靖昌の代表作とウナムーノの言葉を組み合わせて展示、また日本におけるウナムーノの翻訳の受容などもご紹介いたします。

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