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第13回「運命への愛 ―Amor fati―」展

運命への愛―Amor fati― 展覧会パネル文章

 自己の運命を愛するとは、その運命のゆえに死することを意味している。生物が死ぬのではない。運命を生きた「人間」が、死ぬのである。だから、運命を愛することは、自己を捨てた者にしか出来ない。「生きる」とは、運命のことに他ならない。私は、自己の運命として「武士道」を愛して来た。その中に、自己の生存を捨て去ろうと思って来た。それが、哲学者モーリス・パンゲとの出会いを生んだのだろう。パンゲのもつ「エスプリ」が、日本の武士道を「運命への愛」と呼んでいるのを知ったのだ。その日、武士道に潜む魔神は、私の内臓を抉り、その奥底に棲みつくことに成った。そして、運命への愛は、決して到達できぬ遠い空間に煌く「結晶」を引き寄せる。その「結晶」が、歴史の上に、多くの生命の「憧れ」として出現したのだ。私は、それらの結晶の粒の一つひとつを、運命への愛が織り成した、人間の生命の舞踏と信じている。
執行草舟
  • 〈展覧会 案内葉書〉「朝を待つグラナダ」 戸嶋靖昌 画
  • 〈展覧会イメージ作品〉「克寿」 山岡鉄舟
〈展覧会名〉
第13回「運命への愛 ―Amor fati―」展
〈会期〉
2015年10月7日~2017年5月12日
〈概要〉
「運命への愛」とは、「おのれの宿命を受け入れ、ただ独りで生き、ただ独りで死ぬ〈孤高〉の生き方を支えるもの」であり、草舟コレクションを成す根幹の思想とも言えます。この度、駐日スペイン大使館での「孤高のリアリズム ―戸嶋靖昌の芸術―」展と合わせ、芸術への熱情とその〈孤高〉を支えた「運命への愛」を主題に、戸嶋靖昌の作品と草舟コレクションの展示を行ないます。

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