第35回「うつしの美学-実相を見る」展
うつしの美学
展覧会パネル文章
写すとは、人間の文化そのものを支えている根源的な力を言う。人類の文化、そしてその発展形としての文明は、人間の「写す力」から生まれたのだ。古代人は、自分たち人間を定義して「神の似姿」と呼んでいた。そう、人間とは魂の力を掲げる生きものであり、その存在そのものが神を目指すものとして創られたと言ってもいいだろう。その本質の中に、宗教とその中から派生した芸術のすべて、そして現代を築き上げた文明そのものの力が潜んでいる。人間は、その写す力によって今日を築き上げたのである。その力の中に、我々の祖先は美しいものを見つめて来た。人間のもつ最も気高い心を、その写しの力の中に見出して来たのだ。それらのことどもが、芸術を生み出した。そして詩の心を人間生活の中に沁み渡らせたとも言えよう。写す力の中に美を見出すことが、人間を人間らしくさせているのだ。
執行草舟
〈展覧会 案内葉書〉婦人像(右)、卓上静物(左)林武 画
〈展覧会イメージ作品〉椿 安田靫彦 画
- 〈展覧会名〉
- 第35回「うつしの美学-実相を見る」 展
- 〈会期〉
- 2024年2月6日(火)~2024年4月20日(土)
- 〈概要〉
- この度、「うつしの美学」と題し、芸術の根本ともいえる「うつす」とは何か。また、「うつす」ときに見つめる「実相」―奥に隠された真実の姿―とは。さまざまな作品を通じ「実相」へのアプローチがいかに為されるのか、本展覧会にて探ります。林武、広瀬功、戸嶋靖昌、石田淳一らの世界観あらわれる絵画を初め、安田靫彦のスケッチ、本画から、熊川渓雲の木彫まで、幅広い作品展示をお楽しみください。