第36回「砂の時間」展
砂の時間
展覧会パネル文章
砂は何ものでもない。何ものでもないからこそ、砂はまたすべてを包含しているのだ。砂からは何も生まれない。だからこそ、またすべてを生み出していると言っていいだろう。砂は、我々の感性が知る最小のものという意味にもなろうか。最小のものは、形がない。形を成せば、その最小のものは最小ではなくなるのだ。砂は、我々の肉体が滅びに向かっていることを知らしめてくれる。それは我々の生命が、簡単に崩れ去ることを予言しているのである。砂の中に、我々は生命の本源を見ているのだ。そして魂が目指す者を、我々の前に現前させてくれているに違いない。我々が憧れに向かうことを、砂は祈っている。その祈りが、砂の脆弱性と成って目の前に現われてくる。我々は砂を見つめることによって、我々の未来を予感している。我々を食らい尽くす時間という魔性との対決なのだ。
執行草舟
〈展覧会 案内葉書〉水平の風 佐藤忠 制作・撮影
©2024 Chu SATO
〈展覧会イメージ作品〉黙したるもの 立原青 撮影
- 〈展覧会名〉
- 第36回「砂の時間」 展
- 〈会期〉
- 2024年4月30日(火)~2024年8月31日(土)
- 〈概要〉
- この度、「砂の時間」と題し、芸術における変幻自在な時―象徴的に「砂」と表わされる―を主題として、その魅力を追った作家たちの作品を中心に展示します。目に見える形としては極小の単位に分解された「砂」。一粒に量子力学的な未来まで予感させる姿を、佐藤忠の金属彫刻、立原青の写真ほか、砂漠を描いた阿部平臣の大作品も含め、さまざまな作品から探ります。悠久の時間をお楽しみください。